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巨大投資銀行買収に動く韓国銀行業界
2008年8月22日/朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

 産業銀行は米投資銀行4位のリーマン・ブラザーズの経営権獲得を目指したが、交渉は決裂した。リーマン・ブラザーズはサブプライム問題の直撃を受け、ウォール街で破産説が取りざたされている世界的な投資銀行だ。

 双方は8月初めまで水面下で交渉を続けてきたとされる。しかし、最終段階で交渉がまとまらず、産業銀はいったんリーマン・ブラザーズの株式取得を断念した状況だ。しかし、韓国の他の民間銀行主導でリーマン・ブラザーズの株式買収が再び検討される可能性は依然残っている。ある市中銀行の銀行長(頭取)は「韓国の金融機関が米国4位の投資銀行の買収に乗り出したこと自体が事件だ。10年前のアジア通貨危機で韓国が米国に手を上げた時に比べると、まさに様変わりだ」と話した。

◆リーマン・ブラザーズが発したSOS

 資金事情が悪化したリーマン・ブラザーズは今年初めから資金の「輸血」に乗り出した。特に数十億ドルから数百億ドルの資金を運用する国富ファンドを持つ中東国家や中国、韓国などに接触を試みた。業界関係者は「リーマン・ブラザーズだけでなく、米金融機関の大部分が国富ファンドに頼っている」と話した。

 しかし、中東や中国は米国との政治的関係を考慮すると、株式の譲渡先として適切ではないという見方がある。韓国の企画財政部高官は「イスラム国家の中東や競争関係にある中国が買収すれば、米国の企業情報がまるごと流出する可能性があるため、米政府が許可するだろうか」と疑問を投げかけた。

 そんな背景から、リーマン・ブラザーズは6月から韓国への株式売却を打診し始めた。メリルリンチに20億ドル(約2170億円)の投資をした韓国投資公社(KIC)をリーマンの役員数人が非公式に訪れた。KIC側は投資の是非を検討したが、投資魅力がないと判断した。KIC幹部はその理由について、「リーマン側が追加的な損失の有無など投資決定に重要な質問に明確な回答を示せなかった」と話した。

 リーマン・ブラザーズは期待していたKICに「ノー」を突きつけられると、同じ時期に産業銀にも接触した。産業銀の閔裕聖(ミン・ユソン)銀行長は積極的な動きを見せた。閔銀行長は昨年6月の就任直前まで3年間、リーマン・ブラザーズのソウル支店代表を務め、同社の内部事情を誰よりも知っている。

 また、ウォール街で韓国人としては最高ポストにいるリーマン・ブラザーズ本社のチョ・ゴンホ副社長も韓国銀行業界との接触に一定の役割を果たした、と金融業界はみている。

 産業銀は国内の複数の銀行と共同で買収を推進する方向で交渉を進めた。交渉に臨んだ業界関係者は「7兆−8兆ウォン(約7240億−8280億円)で世界的な金融機関を買収すれば、韓国の金融産業が国際化する重要な契機になると判断した」と話した。経営権を取得しても実際の経営は現在の米国人に委ねる案まで準備した。

◆リーマンの財務状況、予想より深刻

  今月初めにリーマン・ブラザーズの本社がある米ニューヨークで具体的な交渉が行われた。外電によると、交渉で示された価格はリーマン・ブラザーズの簿価価値を50%上回る水準だったという。しかし、土壇場で交渉は決裂した。リーマン・ブラザーズ側が示した高値も負担だったが、産業銀が自ら交渉から手を引いたのだ。

 韓国政府高官は「帳簿を調べたところ、(リーマンの)損失は予想より深刻だった。損失が生じると追加的に資金を注ぎ込まねばならず、政府(産業銀行)が買収に臨むにはリスクが大きすぎると判断した」と述べた。

◆リーマン買収、残された可能性

 交渉を主導した産業銀行は具体的な交渉過程に関して、「ノーコメント」を繰り返している。交渉の余地が完全になくなったわけではなく、米国の他の金融機関2−3社に対しても投資を検討しているためだ。

 閔銀行長は「M&A(合併・買収)はもともと交渉と決裂を繰り返すものだ。現時点でわれわれのカードを全て見せることはできない」と微妙な発言を残している。

 現時点で産業銀はリーマン・ブラザーズの買収を断念した状態だ。しかし、米国の金融不安が沈静化し、リーマン・ブラザーズが追加的な損失を出し切った時点で、再び交渉に臨む可能性を排除していない。また、産業銀抜きで民間銀行が共同で買収を目指す可能性もあるとみられる。

 金融委員会幹部は「産業銀は完全に手を引いた状態だが、民間銀行がコンソーシアムを組んで買収に乗り出す可能性もある」と述べた。金融委の別の関係者は「(他国も)リーマン・ブラザーズに注目しており、韓国が買収するのは容易ではない状況だ」と語った。

◆没落する150年の老舗

 1850年設立のリーマン・ブラザーズは今年3月、業界5位のベア・スターンズの破産を受け、今回の金融不安で「2匹目のいけにえ」になるのではないかとささやかれている。金融不安を招いたサブプライム住宅ローンにベア・スターンズ並みに攻撃的な投資を行ってきたためだ。

 4−6月期だけで約28億ドル(約3040億円)の損失を出し、キャッシュフローが不足している。リスク資産の総額が500億ドル(約5兆4280億円)に上るとの分析もある。

全洙竜( チョン・スヨン)記者

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