元県議ら12人全員無罪 鹿児島選挙違反事件で地裁判決

2007年02月23日13時21分

 03年4月の鹿児島県議選をめぐる選挙違反事件の判決が23日、鹿児島地裁であり、谷敏行裁判長は公職選挙法違反(買収・被買収)の罪に問われた鹿児島県志布志市の元県議・中山信一被告(61)ら12人の被告全員に対し、「いずれも犯罪の証明がない」などとして無罪(求刑懲役1年10カ月~6カ月、10被告に追徴金26万~6万円)を言い渡した。谷裁判長は、2回の買収会合に出席していないとする中山被告のアリバイを認定し、「買収会合の事実は存在しなかった」と判断。6人(起訴後死亡した1人は公訴棄却)の自白調書は「脅迫的な取り調べがあったことをうかがわせ、信用できない」などとして、検察側の主張をことごとく退けた。

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無罪判決後、会見する懐俊裕さん=23日午後1時15分、鹿児島市の弁護士会館で

「全員無罪」の垂れ幕を掲げる支援者=23日午前10時6分、鹿児島地裁で

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中山信一被告(前列左から2人目)を先頭に鹿児島地裁へ向かう各被告と支援者たち=23日午前9時16分、鹿児島市で

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鹿児島県志布志市

 起訴状では、中山被告が妻シゲ子被告(58)らと同年2~3月、同市の会社員藤元いち子被告(53)宅であった4回の会合で、11人に計191万円を渡して投票を依頼するなどしたとされる。

 判決は、4回の会合のうち2回について、中山被告が出席するのは「物理的に不可能」などとして、同被告のアリバイを認定。買収会合の存在自体を否定し、自白調書について「あるはずもない事実が、さもあったかのように、具体的かつ迫真的に表現されている」と信用性も否定した。そのうえで「自白の成立過程で、自白した被告らの主張するような追及的・脅迫的な取り調べがあったことをうかがわせる」と指摘した。

 公判では、自白した6人も否認に転じ、全被告が無罪を主張。約3年7カ月に及んだ公判の大半が、自白の任意性と信用性をめぐって争われた。地裁は昨年7月に自白調書を証拠採用したが、弁護団などに「信用性については判決で明らかにする」と述べていた。

 弁護側は一貫して「自白は強引な捜査で強要されたもの」と主張した。検察側から、自白を裏打ちする物証や買収資金の出どころが示されていないことや、買収のために4回開かれたとする会合のうち少なくとも2回については中山被告にアリバイがあることも指摘。こうした証拠の状況から「見込み捜査によってでっち上げられた冤罪事件」と訴えていた。

 一方、検察側は取り調べに当たった警察官らを証人に立て、「自白は自発的だった」と主張。論告でも「自白は具体的かつ詳細」などとして、信用性が高いことを強調した。

     ◇

 〈キーワード:鹿児島県議選をめぐる公選法違反事件〉 03年4月の県議選旧曽於(そお)郡区(定数3)で初当選した会社社長の中山信一被告(61)が主犯とされる選挙違反事件。県警は当初「業者にビールを配った」「焼酎を授受した」などの容疑で捜査を始めたが、最終的には「買収会合事件」だけを立件し、中山被告ら13人が起訴された。一連の捜査をめぐっては「違法な取り調べを受けた」とする訴訟が相次ぎ、聴取の際に親族の名前などが書かれた紙を踏まされたという男性による国家賠償請求訴訟では県の敗訴が確定。別の8人も係争中。弁護士らも「接見交通権を侵害された」として争っている。



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