1992’12
★”静かな世紀”の到来
会話→電話→世界通信網が
約束する”冷戦後”の世界

 離婚した夫婦100人に聞きました。
「一日の会話時間は何分ぐらいでしたか?」答はゼロから5分というのが大半。どうやら離婚する夫婦は会話をしないらしい。
 つぎに、完璧に円満な夫婦100人に聞きました。
「一日に何分ぐらい会話をしていますか?」答は平均50分。なかには2時間(!) という回答者も多かったそうだ。してみると、夫婦円満の秘訣は会話にあるといってもよさそうである。少なくとも一日に50分以上の会話をする夫婦に離婚はないのである。単身赴任で遠く離れてしまっても、仲のよい夫婦は必ず毎日電話でとりとめもない会話を交わす。これでいいのだ。会話こそが「愛の永続」を保証する重要な条件なのだから。
いい関係が欲しければ”いい会話”の努力を
 「会話の重要性」は夫婦の間だけではなく、あらゆる人間関係にあてはまる。取引関係も恋人との関係も友人関係もみな同じだ。あの冷戦時代、米ソがギリギリのところで大陸間ミサイルのボタンを押さずに踏みとどまれたのも、両首脳の執務室を結ぶホットラインという名の電話回線を使った会話が成立していたからなのだ。ともかく、いい関係にしたかったら積極的で友好的な会話を成立させなければならない。
 「いやぁ私は話ベタでねぇ。話題が見つからないときの沈黙がこわくて……」
 などとお嘆きの方に、話題の見つけ方の秘訣を公開しましょう。 簡単なんですね、これが。自分の目の前にある事物を話題にすること。これが秘訣だ。 ときとして、会話する2人の間に気まずい沈黙の時間が流れることがある。これがイヤだったら、
「このテーブル、相当古いんですね?」などと、目の前のテーブルを話題にする。「静かなところですねぇ。」などと、まわりの状況を描写してもよい。 それでも相手がツンとして黙っていたら、これはよほど相性が悪いと思っていい。この場合は改めて出直したほうがいい。出直し!ということが判明したのだから、「会話」は成功と思っていいのである。
どこにいても必ずつかまる
留守デン+ポケベルの威力
 さて、電話。これが便利なのは、どんなに遠く離れていても会話ができるということだ。しかも相手が地球の裏側にいても電話がつながったとたん二人の距離はゼロになる。素晴らしい!
 ところが最近は電話をかけても皆さん多忙で不在が多く、なかなか話ができないことが多い。そこで登場してきたのが留守番電話である。これは便利だ。相手が留守でも確実に用件が伝わるからだ。
 この留守電に話すのが大の苦手という方がおられる。けれども、留守電だろうが大統領だろうが相手が話を聞いてくれるというときは大いに喋るべきだ。もの言わぬは腹ふくるるワザなり、と昔の人も言ったではないか。
 この留守番電話とポケットベルを組み合せると、さらに便利になる。留守電にメッセージが録音されると同時にポケベルが鳴るようにしておく。ポケベルが鳴ったら、出先から自宅にある留守電に電話をしてメッセージを聞き、すぐに先方に電話する。……私はこのシステムを15年間も使っている。だから、いついかなるときでも私を呼び出せるので、家族も友人も取引き先も安心して満足している。どこに行っているか分からない、連絡もとれない、困った、という事態は、私に関しては皆無。必ずつかまる頼もしい男! というのが私のイメージなのである。エヘン。
電話回線(データ通信網)が
”国家”を消滅させる日
 ところで、地下鉄の車両はどうやって地下に入れたの? という話に似ているが、電話、これは不思議だ。いま全国に電話は七千万台以上あるが、この膨大な数の電話が相互に、しかも瞬時につながるのだ。いや、私の電話は地球の裏側にあるブラジルの友人の家にも簡単につながってしまう。すごいッ!
 「飯山さん、当り前のことに何を感心しているんですか?」などと言うなかれ。私の机の上にある電話が世界中の電話と簡単につながるという事実の意味は、じつは大変に重いのだ。 どういうことかというと、電話の回線というのは、通話のためだけではなくデータ通信用に使用できるということだ。このことはパソコン通信のシステムに慣れきっている私たちには、ごくごく当り前のことで、いまさら驚くべきことではない。
 しかし、このデータ通信システムが私たちの社会に与えた影響は、それこそ計りしれないのである。産業革命のときの蒸気機関以上の変化要因を世界に与えたと言っても言い過ぎではない。
 現代社会が石油のうえになりたっていると言われたのは今から20年ほど前だが、現在の社会は電話回線(データ通信網)のうえに成立していると言ったほうがよいと思う。 

たとえば現在、日米間の為替や資本の取引は、実貿易の何百倍もの金額になっている。この膨大な取引情報は、いわばデータ通信網という血管のなかを流れる血液だ。この流れが止められると世界経済は破綻してしまう。
 また、たとえばネクタイを生産するにしても、その原材料費は数パーセントにしかすぎず、残りはデザインなどの情報料なのだ。いまや、原材料や素材等の一次産品で食べている人間の数より付加価値を高めたり営業などのサービス部門で働いている人のほうが圧倒的に多く、電話やファックスを含むデータ通信網は必要
にして不可欠のものになっている。
 こうしていまやデータ通信網によって、世界は1つに結ばれている。いわゆるグローバル・ネットワークの誕生である。ますます深刻な様相を呈してきている環境問題とあわせて考えると、地球は、まるごと一個の運命共同体なのだ。事実上、今まさに世界は1つなのである。
 グローバル・ネットワークの最大の特徴は国境がないということだ。少なくとも、「国境」という言葉の絶対的な意味が日々失われつつあることは確かなことであろう。さらに言えば、現代における「国家」の存立基盤はますます希薄になってきているということだ。
 ここでズバリと私の予想を言えば、21世紀において「国家」という言葉は意味のないものになっているはずである。明治になったとたんに「藩」という言葉がその重大な意味を失ってしまったように。
軍事力を”無用の長物にした
グローバル・ネットワームの力
 さて結論を急ごう!
 いま、現代社会にとって最も恐ろしいものは何かというと、それは戦争だ。戦争は通信網をズタズタにしてしまう可能性が最も大きい。大規模な戦争によって国際データ通信網が破壊されてしまうと、国際経済は完全に麻痺する。そして、世界の経済は恐ろしい恐慌状態になってしまい、私たちの生活は大きく破綻してしまう。……世界は、もう大きな戦争は絶対にできないのだ。
 冷戦の終結はグローバル・ネットワークの必然の結果だったのである。これにより1〜2年前まで米ソが持っていた巨大な軍事力が完全に無用の長物と化してしまったのである。というよりも、国家を疲弊させる元凶ともなってしまっている。この流れは世界史的なトレンドと言っていい。この巨大なトレンドの先にどんな未来がひらけてくるのか?
 ここでもう一度私の予想をズバリ言えば、21世紀はエネルギーを浪費しない「静かな世紀」になると思う。
エネルギーを消費しない
”静かな世紀”の到来
 グローバル・ネットワークの時代は、大規模な投資をした重化学工業の時代と違って、エネルギーを浪費しない。大量に生産して、大量に消費する高度経済成長の時代はすでに終っているのだ。資源の浪費やエネルギーの無駄使いはをしていたのでは、国家も企業も個人も永続できない。(地球環境そのものがヤバイことになっている。)
 しかり! 「省エネ」は時代の要請なのである。いま「省エネ」に一番真剣にとりくんでいるのは企業だ。「省エネ」に失敗すると企業は生き残ることができないからだ。
 企業に負けずに「省エネ」をめざしている人たちも多くなっている。以前は1リットルで3〜4キロしか走らない車があったが、いまの大型乗用車は7キロ以上走る。石油の消費量も1〜2%の伸びでしかない。
 もはや私たちにエネルギーの浪費は許されない。私たちはもっと静かに暮らさなければならなくなる。いやおうなくそうなる!
 静かな環境のなかで、人々は物質的な繁栄ではなく、精神的・文化的な豊かさを求めるようになるだろう。そうならざるをえない。
 「静かな世紀」は必然なのだ。この「静かな世紀」をより豊かに生きるためのツールとして、パソコン通信はもっともっと注目されるようになるはずだ。「静かな世紀」とは、グローバル・ネットワーク・エイジの別名でもあるからである。

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