1993’04
★ノン・オゾンホールから逃れて”深い森”へ
そのとき”還る森”はわが列島にまだあるか?

 あまりに遠く自然から離れて暮らしているためか、都会人は、グリーン(観葉植物)を部屋に飾ることが好きだ。
 ベンジャミン、パキーラ、ポトス・・たしかに、部屋に置かれたひと鉢のグリーンは、心が緑に染まっていくような潤いを私たちに与えてくれる。
 最近は“エアー・プランツ”とかいって、水をほとんど必要としないグリーンも売られている。けれども、グリーンを楽しむには、やはり“水遣り”をキチンとしなければならない。
 次に述べる「水遣りの秘訣」を実行すれば、あなたが日頃から大切にしているグリーンは、いつも生き生きとしているはずだ。
大量の水遣りが必要なグリーンの”毒放出”
 秘訣というと大袈裟だが、要は、観葉植物には水を大量に与えることだ。土が鉢一杯に詰まっている盆栽鉢とちがって、観葉植物の鉢には、上部に空間がある。この空間は、水を大量に与えるためにある。
 観葉植物の多くは亜熱帯の植物で、ほかの植物が伸ばしてくる根を撃退するために毒素を放出する。このため鉢植えの観葉植物は、自分の毒素で自分がマイッてしまうことがある。暖かい布団にもぐりこんだのはいいが、自分の放屁にたまらなくなって飛び出すことと事態は似ている。
 であるから観葉植物の鉢の土が乾いたら、水を大量に与えて欲しい。すると「毒素」は、水と一緒に鉢の下の穴から放出されていく。このタイミングがいいと、グリーンは見るからに生き生きとしてくる。これでグリーンは「めでたし、めでたし」だ。
 ところが人間の場合は、こうはいかない。 毒素を出すの出さないのって、この地球上で人間ほど大量に毒素を放出している存在は他にない。何十ものピナツボ火山がドカーンと団体で爆発しても、人間の出す「毒素」には遠く及ばない。
 いま現在、もっとも緊急にして恐ろしい毒素は、オゾン層を致命的に破壊しているフロンガスだ。
”最低”の更新を続ける
北海道上空オゾン層の濃度
 2月中旬、恐ろしい電話が入った。電話をしてくれたのは、北海道で気象関係の仕事に従事している友人だ。それによると、北海道上空のオゾン層の濃度は、気象観測史上最低の濃度を連日のように更新しているそうだ。そして、このままだと、「人間が出す毒素で人間がマイッてしまう」という深刻な事態が今年中にも現出しそうだ! と言う。
 いや! 世にも恐ろしい事態は、すでに始まっている。アルゼンチンでは何十万頭ものヒツジが盲目になってしまっているが、日本でも、網膜に異常をきたすサルコイドーシスという原因不明の眼病が蔓延しようとしている。また皮膚癌の最近の発病率は、これまた異常ともいえる高さだ。
 アトピー性皮膚炎。これは子供の病気だが、20年ほど前までアトピー性皮膚炎の子供はほとんどいなかった。しかし最近では、20パーセント近い子供がアトピー性皮膚炎の症状をもっている。この病気の急カーブの増加率と紫外線との関係は不明のままだが、アレルギーや自己免疫疾患のような免疫系の病気の爆発的な増加傾向は、本当に恐ろしいほどである。
 ここで読者の皆さんには、あらためて大きな声で真剣に申し上げたい!
 「今年の夏から、海水浴は中止したほうが身のためですぞ!」
 桜の花が咲いても、花見などとシャレるのは、もう止めたほうがいい。登山、ハイキング、マウンテン・バイク・・戸外のスポーツやレジャーの際には、紫外線よけのサングラスを絶対に忘れないこと。半ソデのポロシャツは着ないで、長ソデにすること。できることなら戸外には出ないこと、これが一番だ。有害な紫外線を浴びないですむからである。
B・C波紫外線の害で世界人口は10分の1に
 紫外線は波長の長さによって、A、B、Cと3種類に分けられる。このうちB波とC波は生物にとって極めて有害である。
 これまでC波紫外線は、その全部が成層圏のオゾン層で吸収されていた。C波紫外線は地上への到達量がゼロだったのである。
 地球の生物が紫外線に犯されずにこれまで生存してこられたのは、酸素原子3個が結びついたオゾンのお蔭だったのである。このオゾンを致命的に破壊してしまうのは、フロンを構成している塩素原子だ。塩素原子は、たった1個で10万個ものオゾンを分解してしまう。

 地球上のすべての生命を有害な紫外線から守っていたオゾン層を強力に破壊するフロンやハロンや四塩化炭素を、人類はこの20年の間に、じつに1500万トン以上も大気中に放出してしまった。この数字は、ほとんど絶望的な数字だ。

 というのは、いま現在のオゾン層を破壊しているのは6〜7年前に放出されたフロンなのだ。この5、6年間に生産されたフロンは放出はされたが、まだ成層圏には届いていない。これがオゾン層に到達したとき・・世界の人口は、10分の1になっているはずだ。
 人間ばかりではない。B波紫外線の殺菌力は非常に強力で、土壌微生物を短時間のうちに殺す。そのため、動植物の生態系を大きく破壊してしまうはずだ。
 同じことは海中でも起こる。B波紫外線が海中の動植物プランクトンの増殖を減少させたり死滅させたりすることは、すでに実験済みのことだ。オゾン層の破壊にともなうB波紫外線の増加は、海洋の生態系をも徹底的に破壊してしまうのだ。
 読者のみなさん。今回は暗い話でほんとうに申し訳ないが、どうか、もう少し読み進めていただきたい。謝りながら、「ついでに」と言ってはヘンだが、ついでにもう一個だけ、暗い数字を上げさせていただく。
サバイバルの方法は1つ”深い森”に隠れること
 オゾン層を破壊するフロンのうち、もっとも強力なのは、フロン11とフロン12である。問題はこのフロンの大気中での寿命である。これが大変に長いのだ。フロン11は、70年から80年。フロン12にいたっては、150年! と推算されている。
 1989年の「モントリオール議定書」以降、国際的な規制が年々強化されて、2000年までにはオゾン層を破壊しやすいフロンについては、全廃(製造中止)ということが合意されたが、時はすでに決定的に遅い。
 というのは、これまでに生産され放出されたフロンが今後100年以上もの間、オゾン層を破壊し続けるという悲惨な現実がすでに確定しているからである。
 かくして人類は、確実にサバイバルの時代を迎えたようである。
 サバイバルとは、生き残り競争のことである。悲惨に死ぬ人間と生き残る人間が、明確に区別されるということである。さて、生き残るにはどうしたらよいか? 方法は、ひとつしかない。いや、ひとつだけある。
 答は単純明解である。 深い森を必死で作って、真剣に守って、その深い森の中に静かに隠れていること、これしかない。
 都会のコンクリート・ジャングルのなかでは、天上からの紫外線が乱反射してしまい、私たちは生き残ることはできない。大量のグリーンをを部屋に飾っても無駄だ。
 今年はまだ大丈夫だとしても、6〜7年のうちには必ず東京の上空にもポッカリと巨大なノン・オゾン層の穴が開く。ノン・オゾン警報の恐ろしさは、光化学スモッグ警報の比ではない。まさに致命的であるからだ。
 皆さん! どうか、パソコン通信をフルに利用して、今回の私の話をたくさんの友人に伝えて欲しい。
 日本は森の国だ。同じ森の国でもカナダは緯度が高いので、ノン・オゾンホールの危険は高い。 私の推算では、日本列島の深い森は1億の人口を呑み込み養うことができる。大丈夫、絶対にあなたは助かりますぞ。だから、自分の部屋に飾ったグリーンを大切にするように、真剣に日本の深い森を守り、大事に育てていきましょうねッ!

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